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月がきれいですね・・・

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つい先日の夕方、外に出ると満月がきれいで、「これはやっぱり、I love you だなあ」とつぶやきながら、しばし眺めていました。

夏目漱石が英語の教師をしていた時、生徒が「I love you」を「我君を愛す」と訳したのを聞いて、「日本人はそんなことを口にしない。月がきれいですね、とでもしておきなさい。それで伝わるから」と言ったとか、言わないとか。(ちゃんとした記録がないので、後世の創作だろうという説も)

今だったら、「愛してるよ」とか「好きだよ」とか言ってもおかしくないけれど、まだ明治だもんねえ。遠回しな言い方で、かつロマンチックに・・・。あの時代に「我君を愛す」とやっては、堅苦し過ぎるか、ストレート過ぎるか、いずれにせよ本当のフィーリングは伝わらなかったでしょうね。

そういえば、同じく明治の作家、二葉亭四迷は「I love you」を「死んでもいい」と訳した、なんていうことをよく聞きますが、それは勘違いで、実際には「(私の身も心も)あなたのものよ」という意味の言葉を訳したもの。(まあ、「I love you」的な言葉ではあるけれど) ツルゲーネフの『片恋』という小説にある一節です。名訳ですね。さすが、文豪の選ぶ言葉は違います。

翻訳の仕事をしていて面白いのは、こういうところです。言語によって、また時代によって、言葉の持つニュアンスや使われ方が違うので、単純に英語の単語から日本語の単語に置き換えるわけにはいかないのです。やり過ぎてもよくないけれど、文芸翻訳をする場合は、文化の違いを考慮に入れてある程度は意訳を入れないと、原文の意味も雰囲気も伝わりません。

明治よりもさらに時代をさかのぼり、戦国時代の日本にキリスト教を伝えたポルトガルの宣教師らも、翻訳には苦労しましたよ。たとえば、「神の愛」。

神という言葉は、もともと霊的な存在ではなくて人を指す言葉。それが死者となった偉人などを含めたもろもろの霊を指すようになって今に至るわけですが、それでは聖書にある「唯一神であり創造主」の訳語とはならないので、アウト。最初のころは大日如来から由来した「大日」という訳語を当てていたのですが、これはちょっと超訳過ぎたので、結局はラテン語のまま「デウス」に。

そして、愛という言葉も、当時は現代使われているように相手を思いやる気持ちを表す意味合いはないので、やはり使えなかったのです。(愛という言葉の意味の変遷については、またいつか書きましょう) それで落ち着いたのが「デウスの御大切」。つまり、神が私たちのことをとても大切に思う気持ちが愛だということですね。これも、なかなかの名訳ではないかと思います。

ああ、翻訳は楽しい。


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コメント

こないだマツコの部屋で、映画の字幕翻訳で有名な戸田奈津子さんが翻訳の難しさとやりがいを話していましたが、やっぱりセンスが重要になるんでしょうね。
言葉選びも楽しそうです。

2015/03/09 (Mon) 21:06 | マウントエレファント #TO/PCoV. | URL | 編集
Re: タイトルなし

マウントエレファント さん、どうも!

> こないだマツコの部屋で、映画の字幕翻訳で有名な戸田奈津子さんが翻訳の難しさとやりがいを話していましたが、やっぱりセンスが重要になるんでしょうね。
> 言葉選びも楽しそうです。

そうですね、英語がわかればできるというわけでもないですからね
センスを磨き続ける必要のある仕事です
大変なこともあるけど、楽しいですよ(^^)

2015/03/10 (Tue) 00:22 | ジェイジェイ #- | URL | 編集

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